『はじめまして。204番です。ご指名ありがとう』
『この身体ですか。大丈夫です。
ちゃんと出来ますから安心してください』
『???
こんなこともうしなくていいって、どういう意味ですか?』
お客様どちらへ…
商品の借り出しはオーナーにご相談頂きませんと…
失礼ですが会員証の方は…
お客様?…
ついこの間、とある著名人が自身のtwitter上で
『一つ目アイドルのブームってもう終わった感あるよね』
といったようなことを呟いたところ、ふとしたことからこれが拡散されて
一部で論争が起こったりちょっとした炎上騒ぎになった……なんて記事が
俺たちがたまたま閲覧していたまとめサイトにも載っていた。
「そういえばあのとき吉田も言ってたよな。
"私なんてどうせすぐ飽きるんだからさ"…って」
言われた吉田は、いかにも何か考えるように視線を右上、左下へとやったあと
ちょっと見たことないような……あるような表情をして、こう言った。
「飽きた?」
俺はいまもこうしてずっと、吉田の隣に居る。
彼女がそうし続けてくれているのと同じように。
「ヨッ、蛇蝎の旦那。相変わらず辛気くさい顔しちゃってまあ。」
『ン〜?オメェ、閻蛾蝶カァ。相変わらズ、奇抜な格好してンナァ。』
「へっへ、中々どうして似合いでしょう?たまにゃあどうです。
旦那も気晴らしにぱあっと、思い切ってコスプレしてみちゃあ。」
『冗談ヨセヤィ。恥ズかしクッテ、目モ開けテランねェヨ。』
「開けっぱなしもつらいでしょうに。」
『俺ァ古イ化けダからヨ。ソういう柄じゃァネェンだワ。
マァ、此れカラはオメェらの時代ダァ、古株が邪魔しチャァ悪ィダロ。』
「なーに仰ってんの!旦那みたいなのがどっしり構えてるお陰で、
あっしらサンピンはこうして気ままにやってけてるんです。
化けの次代を担っているのはどっちかったら、これ疑いようがない。
蛾蝶めがちょっかい出せるのも、旦那の器あってのもんですさ。」
『言っテくれンナァ。今日の夕闇ァ、目ニ染ミるゼ。』
「目薬差しときます?」
『イラネェ』
伏魔ノ怪異名鑑
* 蛇蝎《だかつ》
人が忌み嫌うものの集まり。
不吉と吉兆を同時に呼び入れるといわれる。
遠目に見ると塵や綿毛の塊のような姿形をしているが、
よく見ると、無数のおぞましい物体が犇めき合っている。
* 閻蛾蝶《えんがちょう》
廃地に咲いたキョウチクトウの蜜を啜る蝶類。
振り撒く鱗粉を浴びると四十四日激しい痒みに襲われる。
誰もが避けたがることから、近寄り難いものを指して
「えんがちょ!」と言う文句が流行ったという。
貴方も私も、色んなもので構成されていて
色んなものに支えられて、生きているんですから
別ものだけど、似たもの同士じゃないですか
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