07/10
フタクチサン 〜怪異料亭若女将〜


山中深くにある朽ちた旅館に住み着き、
小さな怪異料亭を商う二口妖怪。
料理の代価はおもに土産話や世間話に付き合うこと。
人当たりが良く、山に迷い込んだ人間を招き入れることもある。

本体は髪であり、物事を判断し飲み食いする目口は
全て髪に備わっている。
前面の顔はそれに操られているだけで、目は飾り。
前の口に何かを運ぶこともない。

全ての所作は髪によって行われるため、
重要な役割から外れた手足は存在感を失い、
両脚は履物と、両腕は振袖と一体化してしまった。

三度の飯よりお喋りが好き。
時に人を獲って食うこともあるが、
外の見聞に富んだ人間は彼女にとって貴重な存在。
いい話し相手になるようなら危害を加えることはまずない。
だが、あまり気に入られると逆に手厚く持て成され、
なかなか帰してもらえないので注意が必要だ。
老衰に至るまで、死んで亡霊となってまでも
付き合わされることさえある。

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