魂袋の悪魍と爪弾き

子を喰らう化け物が居ると聞いて出向いてみれば、なんてことはない
悪漢に食い散らかしにされた我が子を抱える化けの親が一匹佇むばかり。
確かに、化けの子を喰らう化け物のような人畜生が居たようだ。
近頃どうもこの手の変事にぶち当たる日が増えてきており、決まりが悪い。
件の化け物はというと、私が何者であるかをすぐに察した様子だったが
人憎しといった気配でもなく、ただただ、静やかにこちらを見据えている。
草木のみがざわめく束の間のあと、やがて化けの方から口を開いた。

化けの皮何枚も剥がしてもう十分愉しんだでしょう
魂までは剥ぎ取らずにいてくれまいか
すっかり冷えてしまって、鳴かずになったあわれな子たちじゃ
せめて親が抱いてやらねば、誰が慰めてやれる
おお、よしよし……

なるほど、抱いて慰めてやらねばならぬものが目の前に居る。
そうしてやりたい衝迫は、人である身にはいたく虚しい。
日陰に逃げ隠れたけらをわざわざ燻り出して踏み潰すような遊びなど
およそいきものが生くるために必要ないことのはずではないか。

時代が変われば事情も変わり、我々は彼のものらとの力比べに勝って
すっかり立場逆転、お陰で私も食いぶちに困らぬほどの仕事にありつけた。
だがこのような趨勢のなか、人に倣い始めた化け物らを
同胞はいかに扱ってきたか、答えの一つが目の前に居るわけだ。

"魂袋の悪魍"は、道に迷った人を袋小路に誘い込んでは
その大袋で魂を掠め取って食ってしまう化け物とされている。
とはいえいまや、彼のものらの真の生い立ちを知らぬ人はいまい。
この世の化け物とは、我々が、暗がりの奥に感じてきた底知れぬ恐怖を
目に見える形に変化することで乗り越えるべく生み出したもののこと。
この悪魍も元を辿れば、何者かがかくあるべしといって形付けたもの。
その人食い袋の妖怪が、いまでは人に弄ばれた我が子の魂を包んで
いじらしく抱きかかえ、抜き身を前にじっとしているときた。
イエライシャンの仄かに甘い香りが鼻をつく。

せめて、淋しくないようにしてやろう

なんてことはない、人畜生にもなれぬのだ。
私の生業は、ひとよんで征伐人。またの名を爪弾き。
蔓延る人の仇をこの世から追い祓うのが役目。

夜の帳が下りる頃、そこにはもう誰も居なかった。



Dolfuegorapie Modification



そう、あれが夢にまで見た……
なんだったっけ
まあ、夢なんてそんなもんだ



"つまらないものをつまらないといって何故悪い"
そんなことを言ったら、彼らはこう答えてくれた
『好きな人もいるのだから悪くいうもんじゃない』
これについては本当にその通りだろうと思えた
彼らの内のいったい何人が、あの映画に向かって
つまらないといったり、期待外れだといったり
作った人たちを吊るし上げて罵ってみせたりしたか
『みんなつまらないと思っているからいいんだよ』
とでも答えてくれるだろうか、尋ねる気にはならなかった



嵐が過ぎ去った次の日の昼下がり
「明けない夜はない」ってことを思う
でも、いつかまた同じように
嵐が来る日は訪れるってこと
忘れちゃいけないんだよな



キミは口癖のように
世の中綺麗事ばっかりだっていう
ここはビューティフルワールド
そりゃ無理もないね
観念するまで付き合うよ
きたないこと大嫌いなキミだから
きっときっと難しくない




ヨクアール星人はナントーカ星人の作戦をパクったのではないか?
という疑惑の声が侵略星人ネットワークの一部で挙がっています
なお、設定資料上では両者は犬猿の仲とのことでしたが、実際の所
ノエラはバレテールに対してとくに何とも思っていないようです



『ゆけ!壬辰怪獣ミズノエラ!流行りに乗じて人間どもの心を奪うのだ』


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