一つ目の彼女は散発が難しい



さる春の夕暮れどき
ふわふわ陽気にほだされ転寝していると
錆色に照る太陽と橙黄の満月が折り重なり
イタズラ女兎と追い掛けっこする夢をみたのです





冬暮れ白玉鬼火は
ヒューヒュードロドロ  ヒュードロロ


「やっておいで〜、みておいで〜。幽霊縁日寄っといで〜」
「ややや?お前さんがた、人間じゃあないかい。
 なになに、心霊スポット探検中に迷い込んだって?
 失礼だね!ここは歴とした妖怪集落。
 B級オカルトゴシップなんかと一緒にされちゃあ困るんだよねぇ」
 「ほらほら、心霊写真ってのが欲しいのだろう?
 一緒に映ってやるから、それ持ってとっととお帰り!」

「ややや!?猫又殿、その奇天烈な身なりは一体?」
『おお氷柱眼(つららまなこ)ちゃん。これはふぁっしょんじゃよ。時代はもえじゃ!』
「も、もえですとな?」
『近頃の人間共ときたらあたしゃらすっかり古臭い田舎もんだと思われとるにゃ』
「まあ確かに、この前の幽霊縁日も脳天気な若者のお陰であわや台無し。
ここらでひとつ、恐れ慄きの美学というものを教えてやらねば」
『そんな腑抜けをまたたび漬けにするのがこのかちゅーしゃ。
そして極めつけがこのすぽーてぃごしっくふぁっしょんなのじゃ。
これで今時のやる気ない人間共にも、もう遅れをとらないにゃ!もえ〜』
「ああ……何故かB級オカルト(ジダイオクレ)の足音がまた一歩」

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