『やあお待たせ。色々あってね。すっかり遅れちゃったわ』

『何があったって?ほら、僕みたいなのを快く思わない人だって沢山いるし
大人しくぶち抜かれて、死んだ振りしてやり過ごすのに時間かかったのよ』

『全く心配性だね。ゾンビの体を心配したってしょうがないでしょうに』

『んーん、悪い人じゃないよ、多分。僕の顔狙うのためらったもの。
ゾンビは嫌いでも、子供の顔は撃ちたくなかったんじゃない?』

『それよりお腹空いちゃったな。今日は沢山、君を食べたいな〜』

きね子は現代っ子ゾンビーナ
好きな食べ物は"好きな男の子"

「なあ、こんなこと聞いていいのか分からないんだが……
きね子ってたとえば、頭をぶち抜かれたらどうなってしまうんだ?」

『君が驚く』

「いやそういうことではなく」

『べつに、どーにもならないよ。あ、喋れなくなっちゃうか』

「淡白だなあ。しかし首から上が丸々無くなってしまったら
喋れなくなるどころか、目も耳も効かなくなるだろうけれど
そこら辺のことは問題にならないのかい」

『変わんないね、どっちみち。僕達は気配とか温度とか
そういうものを波のように全身へ通して察知してるんだから』

「そりゃあなんだかすごい話だな」

『顔にしたってなんにしたって、あってもなくても、おんなじなのさ。
大事なのは外見じゃなくて中身ってね』

「俺は、できれば外見もあった方が嬉しいかな……」

『……君はちょっと目玉くりぬいた方がいいかもね』

「男だからってことで勘弁してください」


「冷たい機械と 温かい緑は 相性が良い らしいよ」
「へー それは まるで 私達のようね」
「え? それって プロポーズのつもり?」
「そっちの 意味じゃ ない!」

流行りのエコ活動に勤しむ人工生体達

ここでいう人工生体とは、広義では「生物を模った機械」のことを指す。
あくまでも、人の暮らしを補助する単なるロボットだとされてきた。
明確に「人を模った機械」であることが打ち出されるのは
シルバーブルーメ博士の登場を待ってからになるが
古くから暗黙の了解で、感情を持つ機械の研究は進められてきた。

Geomorgue社による、シルバー博士の技術を取り入れた製品
通称「ヒトガタ」の発表とその好評を皮切りに、人工生体の存在は
「魂を宿した機械」の思想共々、社会へ受け入れられていくこととなる。
"人類の新たな良きパートナー"というフレーズを掲げて。

一方で、ヒトガタ以前の旧人工生体はこの流れに翻弄されていく。
多くは次第に家庭環境から退けられ、本来の居場所を追われる身となった。
根幹は違わないものたちが、片方はヒトガタとして愛され
片方は出来の悪いガラクタとして廃棄されていった。

ある人はこのように綴る。
『全ての人工生体は、皆等しく人類の幸福を願う
そのように設計されているし
それだけが彼らに与えられた存在理由だからだ』

またある人はこのように綴った。
『必要とされなくなった彼女達(彼ら)はなにを思うだろう
生みの親に棄てられたことを哀しむのか、あるいは憎むのか
新しい仲間によって、人々の暮らしがより豊かになることを喜ぶのか
それとも、いずれ自身の身も思考も錆びついて動かなくなり
人類の幸福が祈れなくなることを嘆くのだろうか』

ある人工生体は、かつての主人に教わった技術で
その目にまだ辛うじて映る人々の姿を絵に描き遺した

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